避難所の設営などお手伝いしたことはあります。
でも、被災した場合に市民の方が活用できるルールとなると、なかなか思い浮かびません。
確かに、普段はあまり意識されず、具体的な支援が問題になりますからね。市民目線で利用できるルールを見ていこう。
被災された方の道しるべ
まずは、被災者に対する支援制度の全体像を把握するため、防災を所管する政府(内閣府)が発行しているパンフレットを紹介しておきます。
とても良くできていて、「住まい」と「生活」の再建に向けた各支援制度の概要がイラスト入りでよくわかると思います。
被災された方、あるいは被災に備えて、保存しておかれることをオススメします。
被災者に寄り添うルールの全体像
では、具体的に、被災者に対して支援の手を差し伸べるルールについて、見ていきましょう。
実際には、様々な法律が関係することになりますが、ここでは、内閣府の資料に沿って、災害発生後の段階(フェーズ)ごとに適用されるルールを確認します。
次の図表をご覧ください。
まず、災害発生後の当初の段階(上図の水色部分)「応急救助」の段階では、「災害救助法」というルールが活用されることがわかります。
また、災害発生後、「復旧・復興」段階(上図の緑色部分)になると、「被災者生活再建支援法」や「災害弔慰金法」などが活用されることがわかります。
法律の名前だけを聞いてもよくわからないでしょう。ざっくりした分類ですが、次の表をご覧ください。
支援の内容 | 対象となるルール |
---|---|
物資(応急仮設住宅、食品・飲料水の提供など) | 災害救助法 |
お金(生活再建支援金など) | 被災者生活再建支援法、災害弔慰金法など |
つまり、支援の内容が「物資」か「お金」かによって、適用されるルールが異なるということです。
上記の2つ、①災害発生の段階と、②支援の内容をまとめると、次のとおりとなります。
ルール | ①災害発生の段階 | ②支援の内容 |
---|---|---|
災害救助法 | 応急救助 | 物資 |
被災者生活再建支援法、災害弔慰金法など | 復旧・復興 | お金 |
みなさんにとって、イメージがしやすいのは、避難所での食品・飲料水の提供や応急仮設住宅の提供などだと思われます。
そこで、まず、災害救助法の仕組みを、次に、金銭的支援として、被災者生活再建支援法や災害弔慰金法の仕組みなどを見ていくことにしたいと思います。
災害対策基本法
なお、法律の体系上(「はじめてのルールづくり」第6回で取り上げたピラミッド構造のようなもの)は、災害対策基本法が災害に対する基本的なルールとなります。
ただし、基本的に、災害対策基本法は国や自治体に対して、防災に対する責任を定めるものなので、「市民のための法律講座」では、詳しく取り上げません。
(目的)
第一条 この法律は、国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護するため、防災に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体及びその他の公共機関を通じて必要な体制を確立し、責任の所在を明確にするとともに、防災計画の作成、災害予防、災害応急対策、災害復旧及び防災に関する財政金融措置その他必要な災害対策の基本を定めることにより、総合的かつ計画的な防災行政の整備及び推進を図り、もつて社会の秩序の維持と公共の福祉の確保に資することを目的とする。
もっとも、災害対策基本法の中で、罹災(りさい)証明書の発行に関する定めがあります(第90条の2第1項)。
(罹災証明書の交付)
第九十条の二 市町村長は、当該市町村の地域に係る災害が発生した場合において、当該災害の被災者から申請があつたときは、遅滞なく、住家の被害その他当該市町村長が定める種類の被害の状況を調査し、当該災害による被害の程度を証明する書面(第四項において「罹災証明書」という。)を交付しなければならない。
この罹災証明書というものは、災害による住宅の被害の程度等を証明するもので、様々な支援を受けるために必要となる重要な書類ですので、ここで触れさせていただきました。
具体的には、①被災者から市町村へ申請→②被害状況の調査→(一定の条件を満たす場合)→③罹災証明書の発行という流れとなりますが、前掲の内閣府の資料からフロー部分を掲載しておきます。
次回は、①災害発生の段階が「応急救助」が必要な状況であり、②原則として、物資の支援がメインとなる、「災害救助法」の仕組みについて、一緒に学んでいきたいと思います。