公費解体の円滑化に向けて
令和6年能登半島地震により損壊した家屋等について、各市町村において、公費解体・撤去の申請に係る手続が進められているところですが、被災した家屋等が共同相続されており、他の所有者の同意書が提出されないなどの理由から、公費解体が進められない状況がありました。
こうした課題に対し、政府は、公費解体の円滑化のため、令和6年5月28日付けの事務連絡(「令和6年能登半島地震によって損壊した家屋等に係る公費解体・撤去に関する申請手続等の円滑な実施について(周知)」以下「通知」といいます。)で、他の所有者からの同意書の提出を必ずしも必要としない場合について、一定の指針を示しました。
内容は、難しいですが、要するに、「建物性が失われているか」が基準となります。
通知では、
・建物全体が倒壊又は流失しているもの
・建物が火災により全焼しているもの
・複数階建ての建物の下層階部分が圧潰しているもの
・建物の壁がなくなり柱だけになっているもの
などが、建物性が認められないとされています。
◎必ずしも、全壊・半壊と結びつけられてはいませんが、罹災証明書の被害認定が「全壊」の場合は「建物性が失われている」とされ、他方で「半壊」の場合は「建物性が失われている」とされるのは難しい場合が多いと思われます。
日弁連の法律相談においても、「半壊」の場合であっても同意不要だと誤解されている方が多い印象を受けたため、留意が必要です。
一応、理論面を考えると、建物性が失われる→財産性が無(ゼロ)→所有権のことを考えなくて良い→後は貴重品や思い出の品などを運び出せば、無価値のガレキ→同意なく撤去可能という理屈だと理解しています。
また、「建物性」が残っている場合も、「所有者不明建物管理制度」(裁判所の手続を経て専任された管理人が同意する)や「宣誓書方式」(紛争が発生しても自分の責任で解決する宣誓書を提出する)などの方法がありますので、諦めずに、自治体の窓口までご相談ください。