2025/2/12

随分と時間が立ちましたが、ノーベル賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会代表委員の田中熙巳氏による演説原稿を拝読しました。
「被団協の田中熙巳さん演説全文 ノーベル平和賞授賞式」(日本経済新聞ウェブ版,2024年12月11日 2:00)

心を打たれる演説であることはもとより、ルールづくりに携わる者として、改めて考えさせられる点がありました。

田中氏は、演説の中で、年代ごとに原爆特別措置法や被爆者援護法など成立したルールを一つの成果として挙げられた上で、課題を述べられていました。
私は、ルールを「インセンティブによって人間の行動を変化させるもの」と機能的に捉えています(森田果(2020)『法学を学ぶのはなぜ?──気づいたら法学部、にならないための法学入門』有斐閣, 参照。)。

もちろん、被爆者援護法などは救済法と言われる領域のルールであり、特殊性があるのも確かでしょう。
しかしながら、原爆被害者にとって、法律などのルールの制定は、一つの達成目標であると同時に、残された課題を照らし出す道標(マイルストーン)ともなっているのではないでしょうか。

ルールを道具的にのみとらえてしまうと、田中氏のような感覚は忘れがちになるなと思いました。
私自身、全国で初めて手話言語条例の制定に関与した際には、そうした感覚を共有していたはずだったと思います。
ただ、次第にそうした感覚が失われているということなのかも知れません。

ルールの本性やその在り方を考えるにあたって、今回の気付きも大切にしなければならないと考えさせられた次第です。

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