前回、改正戸籍法に基づく、フリガナの記載について、改正の概要をご紹介しました。
制度開始以降、本籍地の市区町村から戸籍に記載される予定の氏名のフリガナに関する通知が全国民に対して送付されることになります。
また、通知されたフリガナが誤っている場合は正しいフリガナの届出を行う必要があります。
そして、届出がない場合は、通知されたフリガナが、そのまま戸籍に記載されることになります。
「え、届出をしないと、誤ったフリガナがそのままになっちゃうの?」
この場合、一般の読み方(世間に通用する)に訂正することはできないのでしょうか。
これまで、戸籍法で氏名を変更する場合は、家庭裁判所の許可が必要でした(戸籍法第107条、107条の2)。
新制度のフリガナの変更も家庭裁判所の許可が必要となるのが原則です(戸籍法第107条の3、107条の4)。
ただ、ルールは、守るべき人に不可能を強いることはできません。
多くの国民にとって、税金や年金の通知など、利害損得に直接関係するような話は関心は高いかも知れませんが、「自分の氏名のフリガナ」については、必ずしも関心が高いわけではありません。
しかも、新しい制度であり、ルールを作る動機は(説明はともかく)政府の便宜のためという色彩が強いものです。
そこで、新しいルールに馴染んでもらうために、ワンクッション置いてやることがあります。
このワンクッションを、「経過措置(けいかそち)」と読んでいます。
例えば、大学の経営難で学費(e.g. 100万円→200万円)を値上げしたいと考えたとき、在学生については、現状のままの学費(100万円)とするといった具合です。
戸籍法でも経過措置として、制度開始から1年の間にフリガナの届出がないことで、本籍地の市区町村長によって氏名のフリガナが戸籍に記載された場合は、氏名のフリガナについて、1回に限り、家庭裁判所の許可を得ることなく届出のみで変更することが可能としています(法務省のQ&A:QA11参照)。
※具体的には、戸籍法の附則で経過措置を定めていますが、その読み解きは難解です(以下に条文を引用しておきます。)。
こうした経過措置は、制度の新設や変更のハレーションを低減するものの、配慮し過ぎると既得権益を保護するものとして制度の効果を弱めることにもつながります。
このあたりのさじ加減が、ルールをつくる者の腕の見せどころなのかも知れません。
第百七条の三 やむを得ない事由によつて氏の振り仮名を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。
第百七条の四 正当な事由によつて名の振り仮名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。
附則
第十条 前条第一項の規定により戸籍に氏の振り仮名が記載されたときは、当該戸籍の筆頭者(既にこの項又は次項の規定による届出をした者を除く。同項において同じ。)は、氏の振り仮名を変更する旨の届出をすることができる。
2 前条第一項の規定により戸籍に氏の振り仮名が記載された場合において、当該戸籍の筆頭者が附則第一条第三号に掲げる規定の施行の際現に一般の読み方以外の氏の読み方を使用しているときは、当該戸籍の筆頭者は、戸籍の記載事項を現に使用している氏の読み方を示す文字に変更する旨の届出をすることができる。この場合において、当該届出に係る戸籍に記載されている者に係る新戸籍法第十三条第一項第二号、第二十九条第四号、第百七条第一項及び第百七条の三の規定その他の法令の規定の適用については、当該届出に係る文字を氏の振り仮名とみなす。
3 前条第三項の規定により戸籍に一般の読み方以外の氏の読み方を示す文字を記載されたときは、当該戸籍の筆頭者(既にこの項又は次項の規定による届出をした者を除く。同項において同じ。)は、戸籍の記載事項を一般の読み方による氏の振り仮名に変更する旨の届出をすることができる。
4 前条第三項の規定により戸籍に一般の読み方以外の氏の読み方を示す文字を記載された場合において、当該戸籍の筆頭者が附則第一条第三号に掲げる規定の施行の際現に戸籍に記載された氏の読み方以外の氏の読み方であって一般の読み方以外のものを使用しているときは、当該戸籍の筆頭者は、戸籍の記載事項を現に使用している氏の読み方を示す文字に変更する旨の届出をすることができる。この場合において、当該届出に係る戸籍に記載されている者に係る新戸籍法第十三条第一項第二号、第二十九条第四号、第百七条第一項及び第百七条の三の規定その他の法令の規定の適用については、当該届出に係る文字を氏の振り仮名とみなす。
5 新戸籍法第百七条の三の規定は、前各項の届出には、適用しない。
6 第一項から第四項までの届出をしようとする者に配偶者があるときは、配偶者とともに当該届出をしなければならない。
7 附則第六条第三項の規定は、第一項から第四項までの筆頭者が当該戸籍から除籍されている場合について準用する。この場合において、同条第三項中「第三号施行日から起算して一年以内に限り、その」とあるのは、「その」と読み替えるものとする。
8 第二項又は第四項の届出をする者は、当該届出に係る現に使用している氏の読み方が通用していることを証する書面を提出しなければならない。
第十二条 附則第九条第二項の規定により戸籍に名の振り仮名を記載された者(既にこの項又は次項の規定による届出をした者を除く。同項において同じ。)は、当該名の振り仮名を変更する旨の届出をすることができる。
2 附則第九条第二項の規定により戸籍に名の振り仮名を記載された者であって、附則第一条第三号に掲げる規定の施行の際現に一般の読み方以外の名の読み方を使用しているものは、戸籍の記載事項を現に使用している名の読み方を示す文字に変更する旨の届出をすることができる。この場合において、当該届出により戸籍の記載事項を変更した者に係る新戸籍法第十三条第一項第二号、第二十九条第四号、第百七条の二及び第百七条の四の規定その他の法令の規定の適用については、当該届出に係る文字を名の振り仮名とみなす。
3 附則第九条第三項の規定により戸籍に一般の読み方以外の名の読み方を示す文字を記載された者(既にこの項又は次項の規定による届出をした者を除く。同項において同じ。)は、戸籍の記載事項を一般の読み方による名の振り仮名に変更する旨の届出をすることができる。
4 附則第九条第三項の規定により戸籍に一般の読み方以外の名の読み方を示す文字を記載された者であって、附則第一条第三号に掲げる規定の施行の際現に戸籍に記載された名の読み方以外の名の読み方であって一般の読み方以外のものを使用しているものは、戸籍の記載事項を現に使用している名の読み方を示す文字に変更する旨の届出をすることができる。この場合において、当該届出により名の読み方を示す文字を変更した者に係る新戸籍法第十三条第一項第二号、第二十九条第四号、第百七条の二及び第百七条の四の規定その他の法令の規定の適用については、当該届出に係る文字を名の振り仮名とみなす。
5 新戸籍法第百七条の四の規定は、前各項の届出には、適用しない。
6 第二項又は第四項の届出をする者は、当該届出に係る現に使用している名の読み方が通用していることを証する書面を提出しなければならない。